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#033_2 森岡書店選「秋の心に寄り添う5冊」

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夏の嵐から、秋の嵐へ。気温も一気に下がり、長袖に腕を通しながら季節の移り変わりを感じている頃でしょうか。

毎年のことながら、秋の入り口は自然と心がセンシティブになりがちなもの。胸の中がざわつくような、もの寂しいような……。そんな気分にぴったりな5冊を、「森岡書店」の店主である森岡督行さんにご推薦していただきました。

#01 夏の余韻に浸れる一冊。

「風の歌を聴け」 村上 春樹

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〈作品紹介〉
20代最後の年を迎えた「僕」は、東京の大学に進学した20歳の自分のひと夏を振り返る。青春の一片を捉えた村上春樹のデビュー作。(1979年)

「1970年の夏を描いた、いわゆる物語とも言えぬこの小説を読むと、主人公と同じ20歳だった頃を思い出します。その頃の自分は大きな旅行もせず、ひたすら本を読んでいましたね……。この小説は5冊目に紹介する作品と共通する要素がたくさんあるので、対比すように両冊を読んでみると面白いと思います」(森岡さん)

#02 自分を見つめ、自分を磨く一冊。

「夜中の薔薇」 向田 邦子

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〈作品紹介〉
ドラマ脚本家、エッセイスト、小説家として活躍した著者が、自己主張を貫いた半生を語り、平凡な人々の人生を温かなまなざしで描くエッセイ集。(1981年)

「この中に収録されている『言葉のお洒落』というエッセイを、ぜひTHREE TREE JOURNALの読者の皆様にもお薦めしたいなと思いました。洋服やコスメを選ぶのと同じように、自分が使う言葉を選ぶというのも楽しいことなのでは。とても短いエッセイですが、その中に筆者の素敵な観点が端的に述べられています」(森岡さん)

#03 食欲の秋をもっと美味しくする一冊。

「クレーの食卓」 新藤 信、林 綾野

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〈作品紹介〉
1900年代前半の画家・クレーが残したメモや日記、手紙などから、食べることにこだわり続けた食いしん坊な画家の食卓と人生に思いを馳せる。実用的なレシピも紹介。(2009年)

「画家のクレーが主夫として家族のために作っていた料理はどれも美味しそうですが、レシピも掲載されている『タラの水煮』には特にぐっときました(笑)。日記などから選んだレシピだけに、食べ物だけではなく文化的な風習、作家の日々の暮らしなども想像でき、いろいろな要素を楽しむことができる一冊です」(森岡さん)

#04 アートとの距離がぐっと縮まる一冊。

「『美しい』ってなんだろう? 美術のすすめ」 森村 泰昌

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〈作品紹介〉
美術家・森村泰昌が、シンプルな疑問や質問に答えながら、読者を「美しい」との出会いへ導く。それぞれの「自分道」を発見するヒントも。(2011年)

「アート鑑賞へのとりかかりとして子どもも読めるほどわかりやすい一冊。どんな素朴な疑問にも(「おしゃれってなんですか?」など……)飾らず明快に答える筆者の言葉から、彼が芸術そのものに対して素直に接している人物であることがわかります。私自身はこの本を読んでから、森村氏の持つ感覚の新しさに、改めて気づくことができました」(森岡さん)

#05 ラブストーリーの究極を極める一冊。

「落下する夕方」 江國 香織

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〈作品紹介〉
8年間同棲していた元恋人と、その新しい彼女との奇妙な三角関係。痛みを伴いながらゆるく流れる時間を、切ない感性で描いた恋愛小説。(1996年)

「この物語の魅力は、現実感の薄い主人公たちの“自由さ”だと思います。みずみずしい文体に乗って自然と感情移入し、小説が終わっても物語の続きを考え続けてしまう余韻に包まれます。何年も前に読んだ作品ですが、恋愛小説といえば必ず思い出してしまう一冊。村上春樹の『風の歌を聴け』とぜひセットで読んでみてください」(森岡さん)



「読書に没頭すると、自分の中に“空間が立ち上がる”、そんな瞬間があります。二次元のページが三次元の世界に広がるような、そんな豊かな身体的体験こそ本の醍醐味」と話す森岡さん。
秋の雨の音を感じながら。はたまた秋の木漏れ日の下で。本の中の世界へ旅してみてはいかがでしょうか。

次回は「食欲の秋」をヘルシーに楽しむ、NYで流行中の注目の新フードとそのレシピをご紹介します。どうぞお楽しみに!




〈ブックセレクション〉
森岡 督行
「一冊の本を売る書店」をテーマにした株式会社森岡書店代表。著書に、『Books on Japan 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(BNN新社)『荒野の古本屋』(晶文社)など。『芸術新潮』等で連載や執筆を行っている。同店のロゴマークがIFデザイン賞(ドイツ)とD&AD賞(イギリス)を受賞した。

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