CLOSE




日常のたった一コマが、過去の記憶を顕微鏡で覗きこむように拡大させて、胸をギュッと締めつけることがある。

beautyrelay

89歳を迎える祖母は、お酒とタバコと珈琲が大好きだった。
自分が着る服は自分で作り、いくつかの指輪を手放さずにつけていた。

「体が小さいから自分に似合う服がない。靴とサングラスくらいよ。デパートで買うのは」

よくそう言っていた。
今では施設で暮らし、記憶もあやふやになってきているけれど、体の隅々に刻まれた祖母の心意気は消えていない。
ずっと磨いてきた指先が綺麗だと、介護士たちに褒められて時折笑みを浮かべたりしている。

「ほら。おばあちゃんの顔、年のわりにはシワもないでしょう? 毎朝痛くなるくらい顔を引っ張って洗ってるんだ」

そんな自慢をしてきては、ザラメをたっぷり入れた珈琲を毎朝飲んでいたことを昨日のことのように思い出す。


少し前、近道をしようと新宿伊勢丹の1階を人混みを掻き分けるように早足で歩いていたとき、
祖母がずっと使っていた香水の香りがふと鼻についた。
あれ? 近くにいるのか? そう一瞬思ったけれど、そんなはずはない。きっとそのときも施設で昼寝でもしていただろう。

けれども、その瞬間、祖母と一緒によく歩いた、新宿から遠く離れた場所にあるデパートの光景がまざまざと目の前に蘇ってきて、当時の売り場の様子や店員の言動さえ見聞きできるようで、タイムワープをしたようだった。

もう2度とこの光景と同じ瞬間を生きることはないだろう—そう我にかえると、一緒に歩いた記憶が残っていることに、寂しさ半分、憎らしさ半分……。記憶など消え失せてしまえ—そんなことを考えながら歩いていると、思わず舌打ちをしてしまった。


自分の生きてきた時間のほんの一コマが、掛け替えのない大切なものになってしまうことがある。それは、そのときどきの気分はもちろん、天気にさえも左右されるものかもしれない。曖昧で、「美しい」もの。そんな小さな掛け替えのないものの寄せ集めが、いつか驚くような美の姿を作り上げてくれるのかな、なんて淡い期待を持って日々を過ごす。

記憶がない場所に、美は存在しない。美とはきっと、人の頭に、皮膚に、感覚に、刻まれた記憶が何かと衝突したときに立ち上がってくるものだと思う。



Photo by Mariko Oya

2016.January.28(Thu)

– THREE QUESTIONS –

Q1 人間としての「美しさ」は、どんなところに表れると思いますか?

A1 言葉を口に出すときの空気感、言葉の選び方。

Q2 パーティーのときや大切な人に会う前日など、「美しい自分でありたい」オケージョンの際に、必ずとる行動や習慣は?

A2 襟がきれいに立つシャツを着る。

Q3 お気に入りのTHREEアイテムは?

A3 いい香りがふんわりと程よい、ベルガモット精油のバスソルト。じっくり温まることができて、乾燥対策にも効果的に感じます。




菊竹 寛さんのお気に入りアイテム一覧

・THREE フルボディ トリートメント&バスソルト AC

<菊竹 寛 KIKUTAKE YUTAKA>

1982年生まれ。福岡県太宰府市出身。早稲田大学大学院文学研究科卒業。タカ・イシイギャラリーに勤務にする傍ら、2014年春に生活文化誌「疾駆/chic」を創刊し企画・編集を行う。2015年夏にYKG Galleryをスタート。
http://chic-magazine.jp
http://www.ykggallery.com

CLOSE

Latest Topics
友里さん(2)

THREE Lovers

#188 友里さん(2)

#049_2 〈MOVIE解説〉ローマットな質感で、花咲くような唇へ。

Features

#049_2 〈MOVIE解説...

これまでも、これからも。

THREE's Eye

これまでも、これからも。

入浴は心・体・肌の万能薬

Seasonal Beauty Method

入浴は心・体・肌の万能薬

ABOUT
THREE TREE JOURNAL

しなやかに生きる洗練された
大人の女性たちへ

ALL CONTENTS

美の感性を刺激する
コンテンツ一覧
close

ABOUT

しなやかに生きる洗練された大人の女性たちへ

THREE─「3」は、「創造」の象徴。また、相反する2つのものを組み合わせることで、3つめの新しい価値を創造すること。

「THREE TREE JOURNAL」とは、そんな創造力を持ち合わせた「しなやかに生きる洗練された大人の女性」たちに向けて、五感を刺激し、豊かな感性を育む、新しいウェブジャーナルです。

THREEがもつ世界観やイメージを通して、感性を揺さぶり、語りかけ、共感、共鳴することで、THREEというブランドをより身近に感じていただくための試みであり、読者自らが興味を開拓し、アクションを起こすきっかけとなるようなコンテンツをご紹介していきます。

関わる人々が、自分自身をより高めることができる場のひとつとして、お互いの価値観を共有し、関係性を深めてゆくことを目指す「THREE TREE JOURNAL」を、どうぞお楽しみください。

To sophisticated adult women who live elegantly

Three—’3′ is a symbol of ‘creation’. It is the creation of a third new value by combining two contradicting things.

“THREE TREE JOURNAL” is new web communication contents for ‘sophisticated adult women who live gracefully’ possessing such creativity, where they can cultivate their rich sensitivity and stimulate their five senses.

It is an attempt to have them feel the THREE brand more closely through every expression, image and world view that THREE has by the brand, participating creators and users stimulating each other’s sensitivities, talking, identifying and relating. We’ve prepared contents as a springboard where the users themselves can develop new interests and take action, and generate reciprocal communication.

Please enjoy “THREE TREE JOURNAL” where we aim to deepen relations and share each other’s values as a place where those involved can cultivate themselves.

close
Popup navigation for smartphones.